151会メールマガジン 第12号 -----------------今号の記事・目次----------------- 1 はじめに 2 債権回収ノウハウ 3 インターネットを巡る法的問題 4 ドラゴンズベースボールアカデミー 5 151会今後の予定等 ------------------------------------------------- ---1 はじめに----------------- しばらく本MLにつき,ご無沙汰しておりまして申し訳ありません。 151会メーリングリスト,今回の担当の151会会員,弁護士の 水越 聡(みずこし そう)と申します。 先回もそうでしたが,せっかくの機会と思い,筆を進めます。長くなると思いますが,お時間のあるときに読み物として読んでいただければ,と思います。 今回は,実益のあるものとして事業を営んでいる方にとっては身近な問題である債権回収の問題,読み物的なものとしてインターネットの問題の2本立てでお送りさせていただきたく存じます。 ---2 債権回収のノウハウ ----------------- 売掛金の支払が滞る,貸金が返ってこない,これほど憤る場面はないといっても過言ではありませんが,営業活動を営む以上,売掛金の未払事案は避けて通ることができません。 弁護士費用についても,支払が為されないことも,そう珍しいことではないのが実情です。 ------(1)事前の対策------------- 債権未回収問題に対する予防策は,①契約書を適正に作成し,②取引相手との間で認識のずれをなくす,③場合によっては取引を中止する,ということに尽きます。 支払うべきものを支払わない,ということが許されるはずがないですが,ケースによっては,合意内容が不明確な場合も散見されます。面倒でも契約書を作成し,取引相手の納得を得て取引を行う必要があります。 パワーバランスから,契約書の作成を要求できなかったりする場合もあると思いますが,そこはビジネスですから,お互いのために契約書を作成するのがよいです。それをすることができないならば,破談とした方がよいことも多いです。 契約書作成の効果として,仮にトラブルとなった場合に証拠となる,という点の他に,規範意識の低い(ルールを守ろうとしない)取引相手だとしても,契約書を作成しておけば,ルールを破ってはならないという一定の抑止効果が生まれることが挙げられると思います。 私は,これを,野球の場合の牽制球効果として説明することが多いです。牽制球は,ランナーをOUTにしようとして行うというよりも,盗塁をするなよ!という注意的効果を求めてすることが多いことから,契約書の注意効果と似ていると説明することが多いです。 人の心理は一定ではないので,時々で違うことを思うものですが,書面にしておけば,移り気も防止できます。 契約書の作成は,このほかにも,仕事の円滑化(契約書を交わすことにより,義務内容を明確化することができ,その結果,誰が何をどれくらいやればよいのかが明らかになり,仕事は円滑に捗るようになる。)にも役立つと思われます。 詳細は,「転ばぬ先の契約書」をご参照下さい。 通常は,契約書でコンセンサスをとることができればトラブルは発生しないはずですが,契約書を作成したとしても,これが破られるということは,残念ながらよくあることでもあります。 かかる惨事の防止策は,取引相手を選ぶということしかありません。危ないなと思ったら引くというのも重要なポイントであると思います。 ------(2)事後の対策------------- 実際に支払われない!という場面においては,①任意の支払を促す,②強制的に支払わせるという方策に大別されます。 ①については,口頭→書面→内容証明郵便→弁護士による通知(内容証明郵便)と段階的に強くなる手段があります。 このうち,内容証明郵便とは,送った事実,送った内容が後に残る郵便です。 内容証明郵便は,一般に凄いものだと認識されている節がありますが,時効に関わることなど以外では,著しい意味のあるものではありません。送られた側からすると,本気度が強いと思いがちであるため,支払われる可能性が若干上がる程度です。 弁護士による場合は,一般には,すぐに法的手続を採る可能性が高まるので,支払可能性が大きくなるといえます。 もっとも,これらの方法は,結局ある程度しっかりとした相手に対してでないと奏功しないといえます。 約束したものを支払わないという極めて規範意識の低い(ルールを無視するような)相手であるため,このような手段では支払を期待できないというのが現実です。 そこで,私は,状況次第では,次にご紹介する法的手続を採るようにお勧めすることが多いです。 ②強制的に支払わせる方法として,法的手続(裁判手続)を用いることが挙げられます。 法的手続としては,大きく分けて,A調停,B支払督促,C訴訟が挙げられます。 このうち,A調停は,裁判所で話合いをし,話合いによって解決をしようという手続で,話合いが壊れれば,何も得られません。 B支払督促は,相手が異議を述べない限りは,主張どおりの支払命令を得ることができるという手続ですが,異議が出ると相手の住所地を管轄する裁判所で訴訟をしなければならなくなること,支払命令を得ても現実に回収できなければ何の意味もないことなどから,一部のサラ金業者が多用することを除き,機能していないように思われます。 そこで,私は,B訴訟を勧めることがほとんどです。 訴訟と聞くと構えてしまうかもしれませんが,特に140万円以下の簡易裁判所で行う訴訟は,敷居は高くなく,穴埋め式の訴状という訴訟のための書類を埋めれば可能ですし,費用もそれほどかかりません。場所次第ですが,名古屋簡易裁判所の受付は,丁寧に教えてくれます。 訴訟の中に少額訴訟という類型もあります。これは,複雑でない案件について,60万円以下の金銭の支払を求める場合に,原則1回だけで判断をしようという手続で,通常の訴訟よりも費用が安く済みます。 訴訟は,原則として,裁判所の判断(被告は原告に対して100万円を支払え。など)を求めるものです。 しかしながら,裁判所の判断を得たとしても,現実にお金(上の例でいうと100万円)が得られるわけではありません。 裁判所の判断があっても,支払わない者は多く存在します。 そこで,訴訟でのポイントは,いかに現実的に回収するか,という点であり,うまく和解をすることが有用です。 訴訟の最大の利点は,相手方を呼び出して交渉のテーブルに乗せることと言ってもよいかもしれません。 訴訟外での場面と異なり,訴訟では,裁判所が判断をすることも可能だぞ,という場面です。相手方としては,判断をされることを避けて解放されたいでしょうから,出頭し,和解に応じ,かつ義務を現実に履行する(支払う)ことが期待できます。 具体的には,上記例でいえば,100万円を次回までに用意して渡すのであれば和解するというのが一番です。 仮に100万円用意できないなどという際でも,分割払いを合意しておき,仮に支払わなければ~という約束を裁判上行う(「裁判上の和解」)ことで,万が一支払われない場合でも判決(裁判所の判断)と同様あるいはそれ以上の効果を期待することができます。 このあたりについては,「ワカイ」に詳しく書いてありますので,お時間があれば。 140万円以下の請求ですと,弁護士に依頼した場合,弁護士費用で多くが消えてしまうため,できる限り御自身で対応されるように勧めており,実際に,御自身で回収を実現される方が多いです。 なお,裁判所の判断があっても,支払わない者は多く存在すると書きました。 そのような場合,指をくわえて見ているしかないのか,と思われるかもしれませんが,その場合の手段も用意されています。 執行という手続で,「差押え」なんて言葉はお聞きになられたことがあるのではないでしょうか。 ただ,執行するには,その対象となる財産を知っていなければいけません。支払をしないような者は,財産を持たない,あるいは隠していることが多く,執行が奏功する場面は多くはありません。 したがって,なんとか和解で支払ってもらうことが有用です。 ------(3)一歩進んだ対策・奥の手------------- 苦肉の策として,私がお勧めしているのは,契約書に取引相手の預金口座を書いて貰うことです。これにより,いざとなったときに執行の対象ができますし,いざとなれば預金口座を差し押さえるぞという「牽制球」にもなるためです。 もっとも,私の委任契約書には,依頼者の預金口座を書いて貰うことはしていません(^^)/。 ------(4)まとめ------------- 小難しい話を熟々と述べましたが,さしあたり,知っておいていただきたいのは,その気になれば債権回収は何とか可能な場面も多いので,一度専門家に相談して下さい,ということです。 相談をされても,依頼しなければならないものではありません。相談だけで解決することができれば,それに越したことはありません。悩んでいる労力,精神的負担を思えば,相談費用で回収できれば上出来だと思います。 ---3 インターネットを巡る法的問題 ----------------- 昨今,インターネットを利用した結果発生する,今までに無いような類型のトラブルの相談が多くなってきています。 Twitter,Facebook等のSNSの成りすまし。 webを巧みに利用した投資詐欺。 webを介して行うので,加害者が海外にいるパターンの詐欺。 オークションでのトラブル。 情報商材といわれるもののトラブル。 仮想通貨関係のトラブル。 名誉毀損,営業妨害,人格権侵害。 Twitter,Facebook等のSNSの成りすましは,財産的価値を損なうようなケースこそあまりありませんが,Aと名乗るものが実際はAでない,というのは実に恐ろしいものです。 webページは,多少の技術があれば,個人でも大企業のそれと同じような外形を簡単に作出できますので,webページを巧みに利用した投資詐欺については,信じてしまう方が愚かとは言いがたいものがあります。インターネットに慣れない高齢者の方であれば,なおさらです。 このような詐欺は,海外の人,団体によって行われることもありますが,その場合,被害回復,実態解明は著しく困難になってしまいます。 オークションは便利ですが,いい加減な個人が売主となることが多く,商品が届かない,返金もしないというトラブルが後を絶ちません。 情報商材という,いわゆるノウハウ的なものが高額で販売されています。真実であるとして購入してしまう人が後を絶ちません。そのノウハウが真実であれば,決して他者に販売しないでしょうけれど …。現代版ネズミ講の様相を呈する事案も散見されます。 チェーンブロック技術を用いた仮想通貨は,将来的に国際通貨になる可能性がないわけではありませんが,現状では,魑魅魍魎。法的規制も間に合わず,今後,詐欺やトラブルの温床となりそうな気配です。 名誉毀損,営業妨害,人格権侵害は,相変わらず散見されます。ネット社会のみならず,日本国全体が,エキセントリックな反応をしがちであり,それが容認されているような現状において,今後もネットでの人権侵害は続きそうです。 googleを相手にした削除仮処分手続をするなどしていますが,他方で表現の自由という大きな価値もあるため,インターネットでの人権侵害を食い止めることは難しそうです。 裁判の場面でも,Twitter,Facebook,webページ,メールが証拠として出てくる場面が著しく増えています。そんなもの証拠になるんですか,と言われる方が多いですが,重要な証拠になります。従来から,録音という手法を好む方が多いですが,録音よりも,上記のような文字媒体のほうがよっぽど重要な証拠となると思います。口頭よりも文字の方が,後に残るという認識をするため慎重になるといえるためです。 インターネットは,グローバル(世界中に把握しうる),永続性(消えない),簡便性(パソコンさえあれば,いやスマートフォンからでも,容易に行為しうる。),匿名性(表面的には,誰が行為主体であるかの判別が困難。)を有しているため,簡単に違法行為が為され,その被害は莫大となるという特徴があります。 インターネットは大変便利ですが,他方で,リスクのある場面もあること,インターネットと現実社会の違いをよく認識して使うこと,などマイナス面も強く意識して使っていくべきであると思います。 仮にインターネットのトラブルに巻き込まれた場合でも,救済の余地はあります。 (参考)掲示板に誹謗中傷を書かれた場合の対処法 あきらめないで!と言いたい面もありますが,時間・費用が相当かかりますし,未だ発展途上の分野です。 ---4 ドラゴンズベースボールアカデミー ----------------- 中日ドラゴンズが,小中学生を対象に、野球を楽しむために、野球の高い技能を身に着けるために、中日ドラゴンズOBを講師に迎えて、週1回個人指導を受けてもらう取り組みとして,ドラゴンズベースボールアカデミーを設立しました。 http://www.kidsdragons.net/ 本設立にあたり,主に法的な分野について,微力ながら助力し立ち上げることができました。 現在,二次募集中です。 適齢期のお子さんをお持ちの方は是非ご検討下さい。 お持ちでない方もお持ちの方も,賛助会員となることができます。 賛助会員になると,感謝状が贈られるとともにホームページに掲示されます。 http://www.kidsdragons.net/contributors/individual.html お申し込みは以下の申込用紙を送ればできます。 http://www.kidsdragons.net/pdf/dragons-academy_membership_Application_Form2016.12.pdf 不明な点は,私までお問い合わせ下さい。 ---5 今後の151会の予定等----------------- ・セミナー 平成27年10月21日,アクサ生命保険株式会社さんのご協力で「相続の落とし穴~こんな はずじゃなかったのに!~」を行いました。 大盛況のもと,終わることができました。 セミナー部会というものを発足し,今後も精力的に活動を行う予定です。 ・ゴルフコンペ 5月21日に第13回151会ゴルフコンペを開催予定です。 また詳しいご案内を差し上げますが,現段階で参加していただけるという方は,お近くの151会会員,あるいは本MLで参加表明していただけますと 幸甚です。 ・メーリングリスト 10月21日のセミナーに参加していただいた皆様,メーリングリストの配信が遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。 過去の記事は,151会のwebページ(下記)で読むことができますので,よろしければ,ご高覧下さい。 メーリングリスト部会を発足し,今後はよりタイムリーにお役に立つことができる情報を提供していく所存です。 -------------------------------------------------------------- 「151会」とは,多種にわたる専門家の融合・連携により,細やかなワンストップサービスの実現を目的する士業の集まりです。 依頼者の方々等との出会いを大切に(一期一会),という思いをこめて「151会」としました。 http://151.jpn.org/ ※内容につきましては,個別に,担当会員,あるいは,お知り合いの151会会員にお問い合わせ下さい。 会員情報は以下のページでご覧下さい。 http://151.jpn.org/?page_id=5 -------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------- m 水越法律事務所(愛知県弁護士会) 弁護士 水越 聡 〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内1丁目15番20号 ie丸の内ビルディング5階 tel:052-223-5860 fax:052-223-5861 mail:lawyer@mizukoshi.org web: http://mizukoshi.org/ http://151.jpn.org/ ----------------------------------------------------
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