「チュッパチャップス事件」(知財高裁H22(ネ)第10076号 商標権侵害差止等請求控訴事件)

2012年9月11日(火) 投稿:石田 正己

この事件は、Yが営むインターネット上の仮想店舗(楽天市場)にXが所有する商標権の侵害商品 -「Chupa Chups」のロゴが付された帽子やコップ等- がZにより出品、売買されたことについて、Yが商標権侵害の責任を負うかどうかが争われたものです。原判決は、売買の主体は出品者Zであり、Yは売買の主体ではないものとして原告(商標権者X)の請求を棄却しました。かかる判決を不服としてXが控訴したのが本事件です。

控訴審において、Xは、Yは取引メールの配信や代金決済など具体的な売買行為に関与しており、Zとは非常に強い相互利用関係をもってYとZとが共同で商品の販売を行うものであると主張してきました。一方、Yは、自己の行為は取引の「場」を提供しているだけで、「商品の譲渡」を行ったのはあくまでもZであると主張し、たとえ侵害品が出品されていたとしてもYはその商品を削除する権限はなく自主的に停止させるか若しくは店舗ページ全体の掲載を停止することしかできないが、誤った判断により店舗ページ全体の掲載を停止しまうと、Yが出品者に対して損害賠償責任を負わされることにもなりかねない。特に商標権侵害の場合、類否判断が微妙なケースもあれば、許諾の有無、先使用、並行輸入など個別の事情が分からなければ侵害の有無を認識することもできないとの反論を行ってきました。
これに対し、裁判所は、ウェブページ運営者は出品者から営業上の利益を得ている以上無責任でいられるはずはなく、商標権者等から侵害の指摘を受けた場合、運営者は侵害の有無を速やかに調査するなどして適切な措置を取るべきで、それを怠った場合にはモール運営者も責任を負う場合があるとして、モール運営者の責任を一般論としては肯定しました。その上で、本件の場合、一定の合理的期間内に問題のページが削除されているとして、YがXの商標権を違法に侵害したとまでは言えないとして控訴棄却の判断をしております。

この事件で、裁判所は、合理的期間として8日というのを基準として挙げておりますが、この基準はショッピングモールの規模や侵害の態様等によって変わることもあろうかと思われます。楽天市場では現在1億点以上もの商品が常時出品されておりますが、これらの商品について侵害が疑われた場合、それがライセンス商品か並行輸入品かといった事実を調査し、専門家と相談しながらわずか8日の間に最終決断を下すというのは相当慌ただしくなることが予想されます。よって、モール運営者としては、侵害の警告を受けた場合、流れ作業的に処理できる程度まで対応方法の仕組みを十分に確立しておき、尚且つ、各案件について誠実に対応していくことが必要になろうかと思われます。

投稿されたコメント

  1. 水越 聡

    責任を全く否定するものでもなく,また一方で過当な責任を負担させるものでもなく,妥当な判決だと思います。

    ところで,この論理は,オークションの場合のオークション運営業者にも,「営業上の利益を得ている」といえることから,モールの運営者とある程度同等に考えられそうです。
    もっとも,個人が容易に出品できる点で大きく異なるともいえます。
    現状ではオークション運営業者の責任は否定される方向のようですが,当該判決がどのように影響を及ぼすのか要注目です。

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