151会メールマガジン 第20号

2017年2月28日(火) 投稿:石田 正己

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【発行】
弁理士  石田正己

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151会 メールマガジン 20号 (2月号)

ピコ太郎が「アッポーペン」を使用できなくなる!?
   他人に商標を先取りされないためには・・・・

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先日、ピコ太郎の「アッポーペン」や「PPAP」が全く無関係の大阪の企業によって商標登録出願されているという報道がなされていました。万が一、これらの出願が商標登録されてしまうと、ピコ太郎や所属事務所のエイベックスは、各種関連グッズの販売やイベント運営等に大きな支障をきたすことになります。

商標出願をしたのは大阪の企業B社。同社の代表者は、この業界では商標ブローカーとして有名なU氏です。昨年一年間で、B社とU氏は合わせて15,000件以上の商標出願をしており、日本国内への商標出願件数としては1位・2位を独占しています。因みに、3位のサンリオが約800件でしたので、B社とU氏の出願件数がいかに突出したものであるかお分かりいただけるでしょう。

 B社らは、有名な言葉や他人がほしそうな言葉を網羅的に商標出願していき、それを必要としている本人に商標を高額で買い取らせ、またはライセンス料を徴収することを目的としているようです。エイベックスは果たしてこの商標を買い取らなければならないような事態になるのでしょうか。弁理士の視点から簡単に解説していきたいと思います。

 では、なぜこのようなことになってしまったのか。それを理解するためには日本の商標制度のシステムを簡単に知っておく必要があります。

<商標法は先願主義を採用>

 商標法は、先に出願したものに商標権を与える先願主義を採用しています。いくら先に使用をしていたとしても、原則として先に出願したものが勝ちとなるのです。そのため、商標出願を行うと、その出願日以降に出願された同一・類似の商標出願はすべて排除されます(これを「後願排除効」と言います。)。

これを「PPAP」のケースに当てはめると、B社は「PPAP」を2016年10月5日に出願していますので、10月5日以降の出願に対しては後願排除効を有することになります。一方、エイベックスは、同年10月14日に「PPAP」の商標出願を行っていますので、B社の出願が先行商標として存在する限り、永久に登録されることはありません。

<商標出願には印紙代が必要>

 エイベックスの「PPAP」が登録されるかどうかは、上記の「B社の先行商標が存在する限り」という点が大きなポイントになります。B社の出願が適法だったとしても、最終的にB社の出願が消滅してしまえば問題は解消されるためです。

 ところで、商標出願するためには最低でも特許庁に印紙代として12,000円を支払う必要があります。商標出願をオンラインでインターネット出願をする場合、印紙代は指定口座からの引き落としとなります。指定口座に残高が残っていない場合は督促がなされ、それでも支払わない場合は、却下の予告通知がなされた上で、その商標出願は却下処分が下されて消滅します。

 B社の出願は、そのほとんどが一件あたり7万円ほどかかるような広範な権利指定をした商標出願です。B社とU氏とで合わせて昨年15,000件以上の出願をしていたわけですから、印紙代だけでも10億円以上という計算になります。当然、B社らは全く印紙代を支払わずに出願を行っておりますので、やがてその出願は却下処分となります。先願が消滅してしまえば、それまでの後願者が先頭に立つことになりますので晴れて登録への道が開けるわけです。つまり、B社の10月5日出願の「PPAP」が2月28日に却下処分されたとしたら、エイベックスの10月14日出願の「PPAP」が最先の出願となるのです。

<登録要件としての使用意思>

 では、B社が遅ればせながらにでも出願印紙代を納付したらどうなるでしょう。もちろん出願は却下されることはありません。実体審査に付されることになります。商標出願が登録されるためには一定の登録要件を満たしていなければならず、それが審査されるのです。登録要件としては、

例えば、

① 自ら使用する商標であること(商標法3条1項柱書)、
② 他人の周知商標でないこと(同4条1項10号)、
③ 他人の商標と混同を生じないこと(同15号)、

・・・・などがあります。

従って、自ら使用しない売買目的の商標出願は上記①に該当しますし、「PPAP」のような有名な言葉は上記②に該当します。B社が「PPAP」の語を使用したグッズなどを販売したらエイベックス(若しくはピコ太郎)の真正商品との間で混同を生じさせるでしょうから上記③にも該当します。

 従って、B社が出願印紙代を納付したとしても、実体審査が通ってB社の出願が登録になるということはまずあり得ないと考えられます。

<分割出願という裏ワザ>

上記のような状況から、昨今の報道では、B社のような商標ブローカーはけしからん!と言いつつも最終的にはエイベックスには大きな影響はないでしょう・・・というのが大方の論調でした。しかし、事態はそう簡単ではないのです。

 B社は実体審査を受ければ登録できないことは分かっていますので、出願印紙代を支払うことはありません。しかし、支払をしなければ出願は却下されてしまいます。そこで、B社は、出願日を維持するために出願が却下される直前に分割出願という手続を行ってきます。

 分割出願とは、最初になされた一つの出願を二つ以上に分けて出願し直す手続です。分割出願がなされると、最初の出願が印紙代不納で却下されても、分割した出願が存続することとなり、しかも分割出願の出願日は最初の出願日である10月5日に遡及します。

 B社は、こうしてトカゲの尻尾切りのようにして、ひたすら分割出願を繰り返し行うのです。 そうなると、エイベックスは永久に先頭に立つことはできないのです。あとは根競べと言ってもいいかもしれません。

もっともB社の出願は商標登録されているわけではありませんので、エイベックスやピコ太郎が「アッポーペン」や「PPAP」を使用することが商標権侵害になるということはありません。しかしながら、エイベックスが自ら商標権を取得できないとなると、第三者の無断使用に対する権利行使の局面で支障が出るかもしれません。

<我々が今できること>

 このようにB社の出願は商標制度を巧みに悪用した許されざる行為ですが、商標法に従った手続を踏んでいる以上、刑事事件としての立件は難しいかもしれません。とは言え、エイベックスのような大企業が根競べに負けてこのような商標ブローカーから権利を買い取るなどということはまさかないとは思いますし、決してあってはならないことです。むしろ、エイベックスには民事訴訟でも起こしてもらいたいところです。

 大なり小なり商標ブローカーというのは昔からいましたし、今回の報道を見て同じようなことをする者が新たに現れるかもしれません。被害者にならないためには、我々としては彼らより早く商標出願するしかないのが現状です。

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